◇記者コラム「Free Talking」
100回目の箱根駅伝は、青学大の2年ぶりの王座奪還で終わった。1年に1度、この時期に最大のピークを合わせる青学大の“箱根駅伝力”の勝利と言ってもいいだろう。駒大の主力選手は海外レースやほかの駅伝でも結果を出し、“大学長距離界史上最強”と言える実力を示してきた。ただ、箱根駅伝への力の注ぎ方が、明暗を分けた。
青学大の“箱根駅伝力”で突出するのが、3区で逆転劇を演じた太田蒼生(3年・大牟田)。テレビ中継の実況で「箱根駅伝に愛された男」と称された通り、昨秋の全日本大学駅伝に出走した以外は、出雲とともに2大駅伝での出走はないが、箱根駅伝だけは違う。
1年時は3区で東京国際大・丹所健(現ホンダ)との競り合いを制して先頭に立った。前回は4区で駒大・鈴木芽吹(4年)との先頭争いに僅差で敗れたが、ともに鮮烈な印象を残した。今回も駒大の佐藤圭汰(2年)を猛追。最初の10キロはトラックの自己ベスト以上のタイムで入り、ハーフマラソン日本記録超えのハイペースで完走した。
太田のこの能力には、原監督も「チームの合わせ方と本人の合わせる能力が、ピカイチにマッチしたんでしょう」と認めつつ、その要因には「不思議ですよ。不思議ちゃん」と首をかしげた。太田に聞いても「なんでですかね?」とはっきりしなかったが、「1年の目標にして、チーム全体もここだけしかちゃんとピーキングをしていない。合うべくして合った、といういう感じ」と続けた。ほかの強豪校ではレースや駅伝ごとにピークを合わせるが、独自の“青学メソッド”では、年間の最大のピークを箱根駅伝に持っていくという。
太田の1万メートルの自己ベストは昨年11月末に出した28分20秒63。同時期に駒大の佐藤、鈴木、篠原倖太朗(3年)がそろって27分40秒切りの衝撃のタイムを刻んだが、太田は「(27分台でなくても)どうでもいいですね、それは。出ていたら『今年の俺、やべえな』っていうくらい」と焦りはなかった。「1年に1回だけしかない大きな祭り。すごくワクワクして走れるし、一番楽しい大会」と、最も狙っているのが箱根駅伝だからだ。
「集団行動?あまり好きじゃないです」と言い切る強烈な個性も、ここ一番で爆発力を出せた要因の1つかもしれない。年末に同期が鍋パーティーをしている最中、太田だけは後輩と2人で食事をしていたという。そのマイペースさを容認する部内の雰囲気も、太田の活躍を後押しした。
太田は将来はマラソンでの五輪金メダルを目指しており、「日本人がエチオピアやケニア勢に勝てない、という常識を僕が打ち破りたい」と意気込む。まずは2月の別府大分毎日マラソンでデビューし、初マラソン日本記録超えの2時間6分30秒切りを狙う。まさに箱根駅伝を愛し、愛された逸材。その躍進を、もっと見てみたい。(一般スポーツ担当・平野梓)
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2024-01-06 02:24:56Z
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