現地23日、エンゼルスのアート・モレノ・オーナーがチームを売却する検討に入ったことを明らかにし、話題となっている。大谷翔平投手の去就に絡めた報道が多いが、スポーツビジネス的に見ると、このタイミングで売却に動くことになった理由も見えてくる。

まず最大の要因となったと推測出来るのが、本拠地エンゼル・スタジアムの買収失敗だ。2019年にエンゼルスは2050年までアナハイム市にとどまり、同時にスタジアムと駐車場になっている周辺の土地を市から3億2000万ドルで購入し、店舗や住宅などの再開発することで合意していた。

が、これが不当販売だと地元自治体などから反対されたうえ、当時の市長がチーム側に機密情報を漏らしたとして警察当局の捜査を受けて辞任するスキャンダルに発展。買収についても頓挫したのである。エンゼル・スタジアムは1966年オープンと老朽化が進んでおり、周辺地区も含め再開発のめどが立たないのではチームを保有していく意志が薄れたのも仕方ないかもしれない。

さらに今が売り時だという判断もあったのかもしれない。2003年にモレノ・オーナーがチームを買収した時の額は1億8400万ドルだった。それが経済誌フォーブスによれば現在の資産価値は22億ドルと評価されているのだ。

世界的に有力プロチームの資産価値は近年上昇しており、買収額も上がっている。今年イギリスのサッカーチーム、チェルシーFCは史上最高額の53億ドルで売却された。アメリカでもプロアメリカンフットボールNFLのデンバー・ブロンコスが46億5000万ドルで買収がまとまっている。MLBではナショナルズが4月に売却の検討を発表しており、今後数週間以内に入札プロセスが完了し、20~30億ドルで買収されるだろうと見込まれているのだ。

その一方でチームの資産価値が上がりすぎたため、世界的な富豪であってもグループなどを形成しなければ買収できないという事態にもなっている。売りたくてもなかなか買い手が現れないということも考えられるのだ。

モレノ・オーナーは現在76歳で、家族にチームを引き継ぐ意志を示している人がいないという報道もある。オーナーが亡くなり、一族で引き継いだものの、相続税の支払いが困難になったり、親族間でいさかいが起こり訴訟に発展したりということも、アメリカではしばしば起こっている。このタイミングが最良と判断したのだろうとも推測できるのだ。

今回の発表では売却交渉のためのファイナンシャルアドバイザーと契約したことも明らかにされており、売却になるのは決定的だ。果たしてどんな買い手が現れ、大谷の扱いを含め、どんな経営方針をとるのか興味はつきない。