男子テニスの世界ツアーを統括し、選手組合としての機能も持つATP(プロテニス選手協会)が、世界王者ジョコビッチ(セルビア)のオーストラリア入国騒動について11日、声明を出した。

まず、オーストラリアの厳しい感染症対策について「オーストラリアの人々が払ってきた犠牲と厳しい政策を十分に尊重している」とした。その上で「ジョコビッチが、メルボルンへの入国に際し、入国規定を順守するために必要な医学的免除を受けたと信じていたことは明らか」と、渡航に際しての行動をかばった。

また、「裁判に至るまでの一連の出来事は、ジョコビッチの健康状態や全豪への準備を含め、あらゆる面で損害を与えている」と、ジョコビッチを気遣かった。ただし、ATPは「ツアーに参加する全選手にワクチン接種を強く推奨している。我々のスポーツがパンデミックを乗り切るために不可欠であると信じている」と、ワクチン接種を要望した。

ジョコビッチは、ワクチン接種免除が承認されたとして、5日の深夜に全豪オープンが行われるメルボルンに到着。しかし、「入国要件を満たす適切な証明を提出できなかった」ことで、入国を拒否され、査証(ビザ)を取り消された。

ジョコビッチは弁護士を通じ、入国を求めて裁判に訴えた。10日、裁判所は、ジョコビッチの入国を認める判断を下し、ビザ取り消しを無効とした。

しかし、ジョコビッチ側の勝訴は、「ジョコビッチに弁明、相談する時間を与えなかったのは不合理である」という理由からだ。騒動の原因となった入国の条件をめぐる内容には踏み込んでいないように見える。オーストラリア政府は、再度のビザ取り消しも考慮中だと伝えられている。