不適切な指導により日本相撲協会から処分を検討されている中川親方(54=元前頭旭里)が、弟子に暴力を振るっていたことが11日、関係者への取材で分かった。関係者によると同親方は、弟子に対して日常的に殴る、蹴るなどの暴力行為を働いていたという。さらに、人格を否定する暴言を吐くなどし、一部の弟子が録音していた。

協会のコンプライアンス委員会は、すでに親方や所属力士らを聴取。処分は13日の臨時理事会で協議されるが、中川親方は師匠の資格なしと判断され、中川部屋は閉鎖となる見通しだ。同親方は部屋関係者を通じて「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。今は何もお答えできない。またあらためてお時間を取らせて頂きます」とコメントした。

協会は17年の元横綱日馬富士の暴行問題をきっかけに、暴力問題の再発防止に向け、指導者の責任を重視する方針を示している。18年には第三者機関の暴力問題再発防止検討委員会から提言を受け、暴力決別宣言と暴力問題再発防止策の方針を発表。コンプライアンス委員会と有識者会議を設けるなど、暴力やハラスメントの根絶へ本腰を入れて取り組んできたが、またも不祥事は起こってしまった。

部屋閉鎖となれば、力士らは他の部屋への転属が必要となる。中川部屋に所属する9人の力士らは、同じ時津風一門を中心に移籍先を最終調整中。幕下旭蒼天は片男波部屋、幕下吉井は時津風部屋への転籍が有力視されている。協会が7月場所(19日初日、東京・両国国技館)開催に向けて慎重に準備を進める中、水を差す事態となった。

◆中川憲治(なかがわ・けんじ)本名・増田憲治。1965年(昭40)11月9日生まれ、大阪・池田市出身。81年春場所で大島部屋から初土俵。89年初場所で新十両に昇進し、90年春場所で新入幕。幕内在位は4場所で、最高位は前頭14枚目。98年初場所で現役を引退し、年寄「熊ケ谷」を襲名。04年8月に「中川」を襲名し、退職した元春日山親方(元幕内浜錦)が率いていた旧春日山部屋を、17年1月に継承した。現在は審判委員を務めている。