【オークランド(米カリフォルニア州)26日(日本時間27日)=斎藤庸裕】二刀流復活は波乱の幕開けとなった。エンゼルス大谷翔平投手(26)が、アスレチックス戦で1回途中3安打5失点、3四球で降板。プロで初めて1死もとれずに今季初黒星を喫した。18年10月に右肘の内側側副靱帯(じんたい)の再建術(トミー・ジョン手術)を受け、打者出場と並行してリハビリを継続。ようやくたどり着いた693日ぶりのメジャーのマウンドは、屈辱を味わう結果となった。

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マウンド上で打者を圧倒する大谷ではなかった。球速以上に直球に力強さがなく、ミットに収まる前に沈む外角球もあった。最速は152キロ。生きた球でなければ、メジャーレベルの打者には簡単に打ち返される。わずか30球。「ただ投げている感じの方が強かった。手応えも感じる前にというか、その段階で終わったという感じ」。約2年ぶりとなる復帰戦で、打者と勝負できなかった。

開幕前、紅白戦で登板する度に投球内容を修正した。腕の振りの強さ、下半身の粘り、制球力、3度の実戦登板で抜群に改善された。だが、自身が「よりシンプルに投げたい」と話していたように、1年目と比べるとフォームは全体的に迫力に欠けていたように見えた。もちろん、右肘と左膝の手術明けの影響もあるだろう。この日の登板も「腕がいまいち、振り切れてなかった」と、反動で返ってくるような本来の力強い腕の振りは見られなかった。

693日のブランクが、メンタルも次第に不安定にさせた。「1個アウトをとって落ち着きたい、そういう気持ちがうまくいかないところだった。久々だったので、フワフワした感じはあった」。何度も首をかしげ、納得のいかない投球が続いた。「バッターを抑えにいくという気持ちよりも、球を投げることに集中していた感じなので。(原因は)そこら辺」。注目を集めた復帰登板で、厳しい現実を突きつけられた。

残り57試合。異例の短縮シーズンで、1敗は重くのしかかる。「反省するところは反省して、明日以降も試合があるので、まずは切り替えて打席に集中したい」。紅白戦でも最初の登板では内容、フォームともに散々だったが、2週間足らずで修正してみせた。状態に問題がなければ、残る登板は9度。何度も逆境を乗り越えてきた男が、ここでくじけるはずがない。