
教え子たちに監督はどんな人かと問うと、こう口をそろえる。勝利への執念がすごい、と。明徳義塾の監督、馬淵史郎のことである。 【秘蔵写真50枚超】これを見ずに高校野球は語れない!あの名選手の球児時代、どれだけ覚えてる? 「交流試合」という試合の名称は、どこか平和的ですらあるが、この男にはまったく関係なかった。 7月8日、交流試合の組み合わせが決まるなり、馬淵は相手の鳥取城北の情報収集をすかさず開始していた。 「ビデオ見たら、ええチームやわ。明徳はがんがん打ってくるチームの方がやりやすいんやけど、振りがシャープ。知り合いの監督に『いいチームだから、なめたらあかんですよ』って言われたわ」
「甲子園の1勝にはカウントされるらしいからな」
高知の独自大会は3年生を優先的に使ったが、この日は2年生ショートの米崎薫暉(くんが)を復帰させ、ベストの布陣を組んだ。 「交流試合ゆうても、きちんと甲子園の1勝にはカウントされるらしいからな。明徳のためにも負けられん」 ともすれば闘争心を削ぎかねない無観客の静かな甲子園も、まったく気にしていなかった。 「ベンチの中に入って、試合に入ったら関係ないね。外の様子なんか見てる余裕ないもん」 いつもの夏と、今年の夏のもっとも大きな違い。それは勝っても負けても1試合のみという点だ。優勝を目指すというモチベーションがない。 だが、馬淵は言った。 「普段だとね、点差が開いたら、次の試合のためにピッチャーにここからチェンジアップは封印しろとか指示したりするんですよ。そんでもって、今年は、球数も気にしないといかんかったでしょう。でも、この試合で終わりと思うと、余計なことを考えなくていいので、余計に集中できましたね」
「不完全燃焼や……」と交流試合での雪辱を誓った。
試合は8回表を終えた時点で、一時、2-5と3点差をつけられた。しかし、8回に2点、9回にも2点を挙げて、劇的な逆転サヨナラ勝ち。 ツーアウト1、2塁から、4番・新澤颯真(そうま)がライトオーバーの当たりを放ち、2人目の走者が生還した瞬間、馬淵は、ひと目もはばからず、体を反らせ、両腕を突き上げた。この男には、大人ぶった冷静な振る舞いは似合わない。 高知の独自大会では、決勝で惜敗し、「不完全燃焼や……」と交流試合での雪辱を誓った。
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2020-08-10 09:46:19Z
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