今年の智弁和歌山は一味違う。
春夏合わせて36回甲子園に出場し、3度の全国制覇を果たした智弁和歌山といえば、“打”のチームの代名詞のような存在だ。
歴代最多の甲子園通算68勝を挙げた高嶋仁前監督は、こう話していたことがある。
「目指しているのは守りのチーム。でもうちは寮や特待生のようなものがないので、いい投手は、もっと条件のいい学校に行ってしまう。だから打って勝つしかないんですよ」
それでも、1997年夏の優勝時の捕手で、阪神、楽天、巨人とプロで長くプレーした中谷仁氏が2017年にコーチとして母校に戻って以降、着々とバッテリーの強化を進めてきた。中谷氏のコーチ就任と同時に入学した選手が3年になった今年、成果が実り始めている。
昨年8月に監督を引き継いだ中谷氏は、「今年はバッテリーを含めた守りのチーム」と言ってきた。
昨年までは、投手が打たれたり守備のミスで取られた点数を、豪快な打線が取り返すという展開が多かったが、今年の智弁和歌山は、打力もありながら、手堅い。まず投手陣が安定している。今夏の和歌山大会は失点0で決勝まで勝ち上がり、那賀と対戦した決勝も1失点で勝利した。
エースが成長、2番手以降も安定。
3年生の池田陽佑が頼れるエースに成長したことが大きい。今年の冬場の強化で球威が大幅に増し、春季近畿大会では149キロを計測。その数字以上に、「あいつの球はめちゃくちゃ重たい。それに回転が汚いので変則的に動くから、バッターは嫌だと思う」と捕手の東妻純平は言う。
センバツ後に不調に陥ったが、中谷監督のアドバイスもあり復調した。
「右の股関節を隠しながらキャッチャーの方に進んでいくイメージ、というのを言われて、そこからよくなっていった。タメができた分、スピードも出てきたし、コントロールもよくなってきました」と池田は言う。
2年生の小林樹斗も冬場から急成長を遂げた。センバツの準々決勝・明石商戦では好リリーフを見せ、自己最速を大幅に更新する147キロも記録。夏の和歌山大会では決勝の先発登板を志願し、5回2/3、1失点と試合を作った。
左サイドスローの矢田真那斗(2年)も2試合に先発してテンポのいい投球で試合のリズムを作り、山本雄太(3年)、中西聖輝(1年)もリリーフ登板で無失点に抑えている。
https://number.bunshun.jp/articles/-/840273
2019-08-07 11:00:00Z
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