5月14日に札幌で行われたプロボクシング興行で、出場したナイジェリア人2選手が、日本ボクシングコミッション(JBC)に申請、承認された選手とは別人の“替え玉”だった問題で30日、JBCは都内で実行委員会を開き、2選手が日本国内に在留しているプロボクサーライセンスも所持していない“素人”だったことを発表し、興行をプロモートした元WBA世界スーパーライト級王者で平仲ボクシングスクール(BS)ジムの平仲信明会長が謝罪した。

問題の興行は北海道・ガトーキングダム札幌で開催された平仲BSジム主催興行「MUGEN桃Vol20大会」。日本フェザー級1位リドワン・オイコラ(26=平仲BS)の8回戦と、オロゴン氏の息子、ジェイジェイ・オロゴン(23=同)の4回戦で、対戦相手のサミュエル・モセス(37)とカジーム・ラワル(34)のナイジェリア人2選手がともに1回KO負け。2人のボクシングが素人同然だったことから、JBCの安河内剛本部事務局長が当初申請されていた選手の過去の映像を確認、2人が別人の疑いが強いことで調査をしていた。

実行委員会後、平仲会長は「日本に住んでいるナイジェリア人だった。プロではなく、練習していた程度の素人。体重も落としてきていたし、試合前にミット打ちやシャドーボクシングを見たがボクサーだと思っていた」と明かした。試合の仲介をJBCのセコンドライセンスを持つタレントのボビー・オロゴン氏に依頼、さらにオロゴン氏が別のナイジェリア人にマッチメークを頼んだという。JBCは今月に入ってから平仲信明会長とオロゴン氏に聴取し、事実確認をしていた。5人分の航空券代やファイトマネーも入金済みだったが、ナイジェリアから入国も出国もしていなかった。

一方でJBCも外国人選手が日本で試合を行う場合はパスポートの確認をしていたが、今回はその確認作業を怠っていた。平仲会長のパスポートの提示をメールで要求。平仲会長も選手たちに提出を求めたが、手元にないという理由で「試合後にコピーを送る」ということになったという。

素人をリングに上げていたとなれば、安全管理面はもちろん、興行面でも観客を欺いていたことになる前代未聞の不祥事。ボクシング界の信用と信頼に傷をつけたことになる。平仲会長は「知らなかったとはいえ責任は自分にある。どんな処分でも受ける。申し訳ございませんでした」と会見で頭を下げた。今後はJBCの規律委員会で処分が決まることになる。一方、パスポートの確認ミスという初歩的な失態を犯したJBCも理事長や事務局長らの処分はまぬがれない。

替え玉と対戦したオイコラとオロゴンの2選手は勝利を取り消されて、無効試合になるが、8月30日に日本フェザー級王者の松本圭佑(23=大橋)への挑戦が決定しているオイコラの次戦は予定通り行われる。