桐生祥秀(24=日本生命)が6年ぶり2度目の優勝を果たした。タイムは10秒27だった。

今季だけで10秒0台を4度出し、高いアベレージを示していた。その中で日本選手権へ向け、スタートを改良して挑んだ。左右の足幅を広げることで、低く、鋭く出るようにしていた。

会場の新潟デンカビッグスワンスタジアムは京都・洛南高2年時の12年全国高校総体の場所。その時は故障もあって、無冠に終わった。「(新潟は)全然いい思い出がない。今回、いい思い出に変えたい」と話していた。その言葉通りの結果となった。

自粛期間中も「ポジティブ」に過ごせていた。デッドリフトなどウエート道具を購入し、自宅で励んだ。人が少ない早朝5時、夜9時前後に近所をマスク姿で走った。もちろん普段のように思いっきり練習はできない中でも、「マスクをつけることによって心肺機能を高めよう」と負の感情は湧かなかった。「世界中誰でも満足にいってない」とあせりは一切なかった。精神的にも成長。記録も安定するようになった。

日本選手権王者の肩書きを手にし、これで気持ちよく、冬季練習に入れる。もっと、もっと東京オリンピック(五輪)へ成長していく。

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◆東京五輪への道 指定の期間に東京五輪の参加標準記録(10秒05)を満たす、あるいは世界陸連のランキングで上位に入る必要がある。その上で来年6月の日本選手権の3位以内で内定。現在、参加標準記録を満たしているのは、サニブラウン、桐生、小池の3人。ケンブリッジは今年8月に10秒03を出したが、それはコロナ禍により、参加標準記録の対象期間外。