全ての3年生に花道を!日本プロ野球選手会(会長=巨人・炭谷銀仁朗)が日本高野連に対し、今夏の地方大会開催の援助を目的とした寄付を検討していることが19日、分かった。高野連は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、20日の運営委員会で「第102回全国高校野球選手権大会」の中止を正式決定する見込み。財政難で開催が危ぶまれる地方大会もある中、垣根を越えて「救いの手」が伸びる可能性もある。
春のセンバツに続き、高校3年間の集大成でもある夏の大会も中止が確実な状況。引退する3年生のために感染防止を徹底し無観客で地方大会が行われる見通しも、財政難で開催断念や参加費の徴収を検討する県もある。このままでは力を出し尽くして、笑うことも泣くこともできない球児が生まれる…。そこでプロ野球選手会が炭谷会長を筆頭に「何かできることはないか」と考え、寄付という形での支援を模索中だ。
20日の運営委員会で夏の大会中止を正式に決める方針の日本高野連は、すでに各都道府県の高野連に対して「収入0」を想定した支出状況を調査させるなど全国一律の無観客開催の要望を出す方針。ただ、開催費用は数百万円から大都市などでは1000万円以上にもなり、貴重な財源だった入場料収入が見込めない無観客開催のハードルは高い。
プール金があるのは一部で、ある県の幹部は「算出したが消毒に一番費用がかかりそう」と吐露。昨年は全国最多188校が参加した愛知県の幹部も「夏は10球場を使用する。収入ゼロでは難しい」と頭を抱える。日本高野連も財政難の県などに対する補助金を検討しているが、資金は多ければ多いほど消毒用品の購入や人件費に充てて感染防止を徹底することが可能で、球児を守ることにもつながる。
プロ野球選手会は3月にセンバツが中止になった際も出場予定だった32校の球児らに対して何かしら行動を起こそうと模索した。4月9日にはウイルス感染拡大防止に奮闘する医療機関や研究開発、子供の支援などを目的とした寄付活動をスタート。炭谷会長が「12球団の選手会長と相談し、全選手にこの基金について案内しました」とコメントするなど、ここまでスピード感のある対応を見せている。今回も夏の大きな目標が消える球児らに対して心を痛めている選手が多く、ある選手は「地方大会ができる球児と、できない球児が出てしまうのは避けてほしい。そのために少しでも手助けができれば」と選手会の思いを代弁する。
プロ野球選手の多くが野球人生の原点に高校野球を挙げ、恩師や支えてくれた関係者への感謝を忘れていない。今回の選手会の行動は、愛ある人間教育を受け、仲間との絆を再確認できた3年間への「恩返し」でもある。
▽日本プロ野球選手会 日本のプロ野球12球団に所属する日本人選手(一部の外国人選手含む)が会員となっている団体。1980年に社団法人として発足。選手の地位向上を目指して組合結成の機運が高まり、85年11月に労働組合として認定を受けた。現在は、野球教室など公益事業を行う「一般社団法人プロ野球選手会(松田宣浩理事長=ソフトバンク)」と、「労働組合日本プロ野球選手会(炭谷銀仁朗会長=巨人)」の2つが併存する。
《コロナ支援で先月にも寄付》○…日本プロ野球選手会は先月8日、ネットで寄付金を募るクラウドファンディングを通じて感染症拡大防止活動を支援することを発表。炭谷会長がツイッターを通じてクラウドファンディングサービス「READYFOR」の「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」を活用して寄付を行ったことを報告した。集まった資金はワクチンや治療薬の研究・開発の助成、医療機関や福祉施設の活動費用に充てられる。
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2020-05-19 23:40:55Z
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