ただ負けたわけではない。オリックスとの打ち合いに敗れたヤクルトだが、敗戦の中にも手応えをつかんだ。1-1で迎えた4回先頭、村上宗隆内野手(21)が左中間にソロ。3点を追う8回には、山田哲人内野手(29)が左翼席上段に一時同点の3ラン。日本シリーズで満足いく結果が出ていなかった2人の主軸がアベック弾を放った。負けられない戦いが続く中、頼もしい打者たちが奮起した。

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山田と村上の東京五輪金メダリストコンビが本領を発揮した。山田は敗戦ムード漂う中、重い空気を振り払った。3点ビハインドで迎えた8回無死一、二塁。カウント3-1から、低めのチェンジアップを振り抜いた。「誰1人あきらめず何とかしようという気持ちがあったし、みんなの気持ちが後押ししてくれた」。これまで仲間が打ってチームが勝ってきた。今度は自分の番だと言わんばかりに、3ランで恩返しした。高津監督も両手を突き上げてガッツポーズするほどベンチは大盛り上がり。勢いを再び呼び込んだ。

CSファイナルは打率9分1厘。日本シリーズも打率1割台と低迷していたが「スイング自体はすごく振れていた。真っすぐを待ったら変化球が来るし、変化球を待てば真っすぐが来る。そういう運がないのかなと思っていた」と前向きに集中力を切らさなかった。同点の9回、守護神マクガフがジョーンズに被弾し敗れはしたが、まだ3勝2敗と1歩前にいる。あと1つ勝てば20年ぶりの日本一。キャプテンは「また新たな気持ちで神戸で戦うしかない。しっかり守って、なんとか相手より1点でも多く取って、粘り強い野球をしたい」と切り替えた。

若き4番も状態を上げてきた。村上は第1戦で2ランを放ったが、東京ドームでは2試合で無安打。だからこそ「大振りせずにコンパクト」と意識した。それでも、今季史上最年少で通算100号に到達し、本塁打王を獲得したパワーがあれば柵越えできる。得意の逆方向スタンドに突き刺し、右腕を挙げた。6回の第3打席は右翼へ三塁打。8回の第4打席はフェンスギリギリの中飛。強い打球が戻ってきた。

チームは移動日を挟み、舞台を神戸に移してのシーズン最終章を迎える。打つべき選手が打って、次こそは勝つ。【湯本勝大】

▼ヤクルト山田哲人内野手が8回に同点3ラン。山田のシリーズでの1発は、3本打った15年<3>戦以来4本目。ヤクルトで通算4本塁打は大杉、池山に並ぶ球団3人目の最多記録。山田は15年の3本がすべて肩書付きの殊勲弾で、殊勲弾を通算4本打ったのは、球団史上初めてだ。

▼この日は村上宗隆も1発。チームの3、4番がそろって本塁打は15年<3>戦ヤクルト(3番山田、4番畠山)以来だが、その試合で敗れたのは79年<6>戦広島(3番三村、4番山本浩)以来42年ぶり6度目で、ヤクルトでは初のケースとなった。