忘れられない一振りになった。ロッテのドラフト2位、佐藤都志也捕手(22)は延長10回2死一、二塁で代打に立った。オリックス沢田には25日のプロ初打席で中飛に打ち取られている。凡退なら引き分け。「もう負けはない。同じ相手に2度やられるわけにはいかない」。振り抜いた初球チェンジアップは、打った瞬間に抜けたと分かる軌道で前進守備の右翼手を越えた。

プロ初安打が人生初のサヨナラ打。右手を突き上げて一塁を回り、跳びはねながらベンチに戻った。「興奮しすぎて分かんない。サヨナラ自体(経験が)なかったんで、どう喜んでいいのか分からなかったです」。一瞬の戸惑いも、ベンチから飛び出して迎えたナインが消してくれた。

破竹の7連勝がかかっていた。当然緊張した。「でも昨日の試合が人生で一番緊張したので、それに比べたら今日は」と思い出して笑う。26日は昼に2軍戦に出場し、幕張に移動しての“1人親子ゲーム”。1点リードの9回とプレッシャーのかかる場面でプロ初マスクをかぶり、無失点でしのいだ。3日間で初打席、初守備、初安打と1つずつステップを踏んでいる。

捕手として、リードでもバットでも援護したい思いが強い。短い調整期間にもかかわらず、投手陣が力投を続けている。中途半端なスイングはできない。その気持ちを先輩捕手の田村はくんだのだろう。10回の打席に入る直前「(手柄を)もってけ、このやろー!」と送り出してくれた。「あれで気持ちが落ち着いた。手慣れてますね、僕の扱い(笑い)」と感謝した。

初めてのヒーローインタビューに、ファンの声援はなかった。「ボールはお母さんに届けたい。打てる捕手としてセールスポイントを存分に出して、これからも1軍の試合で活躍したいです」。来月からは徐々にスタンドも埋まる。次は右翼席スタンドに「としやコール」を響かせる。【鎌田良美】

◆佐藤都志也(さとう・としや)1998年(平10)1月27日生まれ、福島県いわき市出身。聖光学院では2、3年夏の甲子園出場。東洋大では2年春に東都大学リーグ首位打者に輝き、3、4年時に大学日本代表。1学年上の上茶谷(現DeNA)甲斐野(現ソフトバンク)らをリードした。昨年ドラフト2位でロッテ入団。25日オリックス戦でデビューした(1打席=中飛)。181センチ、83キロ。右投げ左打ち。