大野雄も抜群だったが、高橋がそれを上回る完璧な投球を見せた。結果を出せなかった前回ヤクルト戦との違いは、しっかり軸足に体重を乗せて、ボールを長く持てていたことだ。これは高橋の一番の特長で、強い真っすぐを低めに集めることができる。前回はこの体重移動がうまくできずに球離れが早くなってしまった分、高めに浮いて痛打されたが、全く対照的な投球だった。真っすぐの切れ味が鋭いから、抜いたチェンジアップや外に逃げるスライダーも効果がある。10奪三振が示す通り、ほとんど危なげない投球だった。

大野雄がスライド登板だったように、阪神も勝ち頭の秋山のスライドも考えられた。だが、首脳陣もブルペンなどで状態の良さを確認して、高橋でいこうと決めたのだと思う。そして見事、期待に応える快投を見せた。西勇が登録を抹消されて先発の台所事情が厳しくなっていただけに、この勝ちは大きい。2戦連続で結果を残せないと厳しかったが、計算できる投球を見せたことで、ローテ編成は助かる。最後までもつれそうな優勝争いを勝ち抜くためにも、大きな戦力が加わった。

大野雄が良かったこともあるが、打線は依然として低空飛行が続いている。試合前から苦戦が予想されて、実際にそうなった。阪神が勝つなら、先発が粘って、この日のようにワンチャンスをモノにするしかない中で、絵に描いたような展開に持ち込んで勝ち切った。ある意味、負けも覚悟しないといけなかった大野雄に勝ったことはチームとしても大きいし、高橋も自信になるだろう。力強く帰ってきた次の登板が楽しみだし、チームも19日の巨人戦に弾みがつく1勝になった。(日刊スポーツ評論家)