二松学舎大付(東東京)・秋山正雲投手(3年)は、打席が回ってくる前にベンチで負けを見届けた。延長10回、計172球を投げ抜いたが、同校初の夏8強はならなかった。「やっぱり、とても悔しいです。逆転されたところ(6回)もそうですし、ホームランで追いついた次の回(10回)、あそこで自分が抑えなきゃいけない。とても悔しいです」と思いを絞り出した。

初回に1点を援護してもらったが、5回に京都国際のエース森下に同点ソロを許した。6回には、中川(2ラン)、辻井(ソロ)と2者連続で放り込まれ、勝ち越された。1試合で3本も本塁打を打たれるのは初めてだった。

だが、チームは諦めていなかった。3点を追う9回の攻撃前、市原勝人監督(56)は「アウトを減らすな。2人、ランナーを出せば、空気は変わる」とハッパをかけた。そのとおり、安打と四球で無死一、二塁。ここで秋山が右中間へ大飛球。フェンスぎりぎりまで下がった右翼手に捕られたが、1死二、三塁となった。「いける」という空気が走る。直後、桜井が左越えへ同点3ランをかっ飛ばした。

起死回生の1発。それだけに、直後の10回表、適時三塁打で再び勝ち越されたことを、秋山は悔やんだ。

3本塁打も、決勝打も、打たれたボールは全て真っすぐだった。いずれも狙いより高いところに入り、見逃してもらえなかった。それでも「(真っすぐの選択に)後悔はありません。自分が一番自信を持っているボールなので。そこに後悔はないです」と力を込めて答えた。

今後の進路は「上の舞台でやりたいと考えています」と、プロ志望を表明した。最速146キロ左腕で、この日もスカウト陣の視線を集めた。「真っすぐ、変化球の精度、コントロール、常に磨いていかないといけません。チームに愛されたり、頼りにされたり、こいつが投げたら大丈夫と思ってもらえる投手になりたいです」。人間的にも成長させてもらったと感謝する二松学舎大付での高校野球は終わった。次のステージで、さらに成長する。

◆関東1都6県敗退 二松学舎大付が敗れ、関東の1都6県(東京、栃木、群馬、茨城、埼玉、千葉、神奈川)がベスト8を逃したのは81年以来40年ぶり。なお、高校野球では山梨県勢が春秋の関東大会に出場しており、山梨代表の日本航空は勝ち残っている。