5月にタバレス前監督の後任として就任した横浜FC下平隆宏監督(47)は半年でチームをJ1昇格に導いた。

ピッチ内外でチームを引っ張ってきたFWカズを、感謝の意味も込めて起用すると決めていた。「完全な状況がそろった中でしっかりと勝ち、カズさんが出場してJ1を決められたのは、出来すぎなストーリーでびっくりするくらい」と笑みをこぼした。

就任当初はJ1自動昇格圏の2位水戸まで勝ち点差11の14位だった。危機的状況の中でも「J1昇格後も戦えるJ1仕様」のチームづくりに着手。ボールをつなぐサッカーを掲げ「パスを出したら味方のパスコースに顔を出す」などポジショニングの意識を植え付け「止める・蹴る」の基本技術も徹底させた。

練習のビデオは練習後に見返し、翌日のミーティングのために自身で編集する。練習で自分の死角で起こった出来事も把握し、練習でいい選手は試合に抜てきした。各選手は「ボールを大事にするこういうサッカーがしたかった」と意欲的に取り組み、6月22日の水戸戦から18戦不敗のクラブ記録を樹立した。

J1昇格を遂げたが目標はそこではない。指揮官は、今季J1に昇格し10位以内に食い込んでいる大分を目標に掲げる。大分も片野坂監督の下、つなぐサッカーを浸透させてきた。来季続投は決定的で、下平監督は「大分をいい見本にして、J1に定着したい」と厳しい戦いへ目を向けた。【岩田千代巳】