歴史的な「兄弟対決」は、兄の勝利に終わった。日本代表対U－24（24歳以下）日本代表の強化試合（札幌ドーム）は、日本代表が3－0で完勝した。けがを恐れず、激しいぶつかり合いの中で、日本代表が前半だけで2得点。後半に入っても優勢のまま試合を支配した。北の大地で行われた「ガチンコファイトクラブ」は、兄が威厳を示した。なお日本代表チーム同士の対戦は、1980年（昭55）12月の日本代表－日本代表シニア以来だった。

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記者席から見るピッチは、奇妙な絵図だった。フィールドが、真っ赤に染まった。試合前のアップに現れた両チームのフィールドプレーヤーは、互いに赤色の練習着に身を包んだ。ハーフウエーラインを境に左側を見ても、右側を見ても真っ赤。そして皆の左胸には「日の丸」。異様な光景の中、41年ぶりの「兄弟対決」、「日本代表対U－24日本代表」が始まろうとしていた。

独特な時間が流れた。国歌斉唱は一回のみ。両チームの選手が、一同に君が代を歌った。A代表の森保監督の表情も、いつもと違った。目には涙。こぼれた滴がマスクをぬらした。18年9月、北海道胆振東部地震が起きた。その影響で代表監督として初陣予定だったチリ戦（札幌ドーム）は中止。今回もコロナの影響でジャマイカ戦が流れた。「北海道でいい試合をして、傷ついている方に、全国で大変な思いをしている人に元気や勇気や励ましを届けたかった」。札幌ドームは特別な地だった。

禁断の一戦はTBS系で放送され、激しいバトルが各所で繰り広げられた。無観客の屋内ドーム。天然芝をスライディングで削る「ザー」という音が大きく響いた。「ヘイ」と主審に求める声の応戦も止まらなかった。後半30分にはA代表DF室屋に警告処分が下った。森保監督も「激しく厳しく勝ちにこだわって、局面の戦いにこだわって、最後までしのぎを削ってくれた」と両チームの「ガチンコファイトクラブ」にうなずいた。

結果は「兄」の貫禄勝ち。前半2分にCKからMF橋本が押し込むと、同41分には“弟”たちのパスミスを見逃さず、縦の連携で前線へつなぎ、MF南野からパスを受けたMF鎌田が、ゴール右へ冷静に流し込んだ。前半だけで2得点。後半開始に5人を交代しても、打ち続けた。後半7分には、左サイドバックのDF小川のクロスにFW浅野が反応。一度は弾かれたが、決めきった。森保監督は「プレッシャーはA代表の方にしかないくらい。挑まれるから、またはプレッシャーかかるからではなく、彼らは高い基準で、相手がどこであれ、最善の準備をしてくれる。相手ではなく、自分たちに目を向けられる」と「兄」の頼もしさを強調した。

禁断の「日本対日本」。お兄さんたちが、弟たちに、危なげなく、勝ちきり、世紀の一戦は幕を閉じた。【栗田尚樹】

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