ソフトバンクの「満塁の呪い」がついに解けた。

満塁のチャンスで実に1カ月ぶり、29打席ぶりにチームに安打が出て逆転勝利。12球団単独最多を更新する8度目の交流戦最高勝率へ王手をかけた。

1点を追う6回。2死一、二塁で松田宣が四球を選んだ。絶好の逆転機。だが今のチームにとっては重い重い「満塁」が訪れてしまった。5月16日西武戦でグラシアルが打った右前打を最後に、快音がなかった。

打席に立った甲斐はひそかに狙っていた。ベンチで森ヘッドコーチから「三塁が下がっている。頭に入れておけ」と耳打ちされた。1球見送り2球目。三塁線へ絶妙なセーフティーバントだ。「ミスできない状況。ポップフライやピッチャー前なら流れが悪くなる」。一塁へ気迫のヘッドスライディングで滑り込み、これが同点適時打。「H」ランプがともり、呪いが解けた瞬間だった。

ひとたび呪縛から解放されると、トドメはあっという間だった。続く代打福田がソフトバンク同期入団の元同僚、森福から右翼席へ勝ち越しの5号満塁弾。3月30日西武戦で柳田が打って以来、今季チーム2本目のグランドスラムで試合を決めた。「かわいがってもらった森福さんとの対戦を楽しみにしていた。満塁がどう、とかいうのは考えなかった」。右足と左肩の手術を受けリハビリ生活だった14年に「1軍に帰ってきたら時計を買ってあげる」と励まし、実際にプレゼントもしてくれた先輩への恩返しの一打でチームも救った。

上位を争っていた巨人を破り、楽天も負けたため交流戦王者へ「マジック1」となった。満塁地獄を打ち破った工藤監督は「チームにとって大きい。本塁打あり、内野安打あり。また明日切り替えて頑張ります」と明るく笑った。【山本大地】