男子マラソン前日本記録保持者の設楽悠太(28=Honda)が、東京五輪代表に選ばれても辞退する可能性を示唆した。23日、合宿中の宮崎市内で、3月の東京マラソンで日本記録(2時間5分50秒)を更新して東京五輪代表の条件をクリアしても、2時間5分台では辞退する意向を明かした。東京五輪後には海外のレースを転戦するプランにも言及した。

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淡々とした口調の設楽悠から、異例の発言が飛び出した。東京マラソンで日本記録を塗り替えて東京五輪出場の条件を満たしても、「2時間5分台で記録を出しても辞退すると思う」。そのタイムでは東京五輪で上位争いできないとし、「自分の中では納得できない。暑さに強い選手はたくさんいる」と話した。もし2時間4分台を出した場合には、「(金メダルを争うには)全然勝負にならないと思うが、東京五輪で走る姿を見たいと応援してくれる人のために頑張りたい」と話した。

18年東京マラソンでは、当時の日本記録となった2時間6分11秒をマークしたように、冬場が得意と自認している。「マラソンは夏にやるものじゃない」と話し、「冬で勝負できればいい。正直、オリンピックはどうでもいい」との大胆発言も。所属先の小川智監督は、「辞退すると言ってもできるものじゃないと思うので…」と困惑気味に話し、「裏を返せば、本人はそこ(4分台)を目指そうとしているんだと思う」とフォローした。

設楽悠は、「日本でマラソンを走るのは東京が最後になるかもしれない」とも述べ、東京マラソン後は海外のレースを転戦するプランも明かした。「もっと海外のレベルに挑戦していかないと、日本のマラソンのレベルは上がらない。日本のマラソンを盛り上げていきたい」と話した。

16年リオデジャネイロ五輪では1万メートルに出場したが、「リオではただ名誉しかついてこなかった」と振り返った。「今は名誉のために走る必要はないと思っている。たくさんお金を稼げるのがスポーツの魅力。子どもたちに、これぐらい稼げると走りで見せたい」。五輪にこだわらず、競技者として収入を得ていくことの重要性を口にした。【奥岡幹浩】

◆五輪より1億 設楽悠は昨年11月3日の東日本実業団対抗駅伝後、東京マラソンでの日本記録挑戦を明かし「五輪切符より1億円の方が欲しい。そっちが優先」と話していた。

◆東京五輪男子マラソン代表への道 MGCで優勝した中村匠吾、2位の服部勇馬は代表決定。残りは1人。東京、びわ湖毎日の2大会で、日本新記録となる2時間5分49秒以内が内定条件。その中の最速選手が最後の1人になる。該当者がいない場合は、MGC3位だった大迫傑が代表となる。